ぼかし肥料の作り方|米ぬかで少量から、失敗しない水分と見分け方
精米のたびに出る米ぬかは、畑の肥料としてはいちばん身近な材料です。ところが、そのまま畑にまくと、カビが広がり、虫が寄り、まいた場所の苗の育ちがかえって止まることがあります。米ぬかが悪いのではありません。土の中で一気に分解が始まり、その勢いに作物の根が巻き込まれるのです。ぼかし肥料は、その「一気に」を土の外で先に済ませておくための作り方です。
この記事の色の使い分け ― ■ 緑=そうしたほうがよいこと・うまくいっている状態 / ■ 橙=注意すること・つまずきの原因 / ■ 藍=水と時間に関すること
この記事の目次
ぼかし肥料とは — 生の米ぬかと化成肥料の「あいだ」
ぼかし肥料(ぼかし肥)とは、米ぬか・油かすなどの有機質の肥料に、土やもみ殻を混ぜ、微生物の力で途中まで発酵させたものです。「ぼかす」は、肥料の強さの角を取ってやわらげるという意味です。生の有機物ほど土の中で暴れず、化成肥料ほど一度に効きすぎない。そのあいだの効き方をねらって作ります。
| 生の米ぬか | ぼかし肥料 | 堆肥 | 化成肥料 | |
|---|---|---|---|---|
| 何のために入れるか | 肥料 | 肥料 | 土の体質づくり | 肥料 |
| 効き始め | 土の中で分解が進んでから | 比較的早い | ゆっくり | すぐ |
| 入れる量 | 少量 | 少量(ひと握り単位) | 多量(バケツ単位) | 少量 |
| 土の中で起きやすいこと | 急な分解・カビ・虫・一時的な窒素不足 | おだやか | おだやか | 入れすぎると根を傷める |
| 自分で作れるか | ― | 台所の道具で作れる | 場所と時間が要る | 作れない |
曲線は分解の勢いを表したイメージで、実測値ではありません。米ぬかのように分解しやすい有機物は、土に入ると微生物が一気に増え、そのとき土の中の窒素を先に取り込みます。作物が一時的に窒素不足になるのはこのためです。
ぼかし肥料の材料 — 家庭菜園なら、ポリ袋1袋ぶんで足りる
作り方を調べると、米ぬか何十kg、油かす何十kgという農家向けの配合がよく出てきます。家庭菜園でそこまで作ると、使い切る前に古くなります。材料は役割で覚えておけば、手に入るもので組み替えられます。
| 役割 | 代表的な材料 | なくてもいいか |
|---|---|---|
| 発酵のエサ・主な肥料分 | 米ぬか(精米所・コイン精米機で手に入る) | 必須。これがないとぼかしにならない |
| 窒素を足す | 油かす(菜種油かすなど) | あったほうがよい。米ぬかだけだと窒素がやや少ない |
| リン酸を足す | 魚粉・骨粉 | なくてもよい。果菜類に使うなら少し足す |
| 微生物のタネ | 畑の土・腐葉土・前回のぼかし | 身近なもので足りる。市販の発酵促進剤は必須ではない |
| すき間と水分の調整 | もみ殻・もみ殻くん炭 | なくてもよい。水を入れすぎたときの逃げ道になる |
| 水 | 水道水(冬はぬるま湯) | 量がいちばん大事 |
家庭菜園で使い切りやすい量の例を示します。一般によく使われる配合を、ポリ袋1袋ぶんに縮めた目安です。材料の粒の大きさや乾き具合で水の入り方は変わるので、水の量は数字より次の章の「握り判定」を優先してください。
| 材料 | ポリ袋1袋(45L袋に半分弱) | バケツ1杯(10L前後) |
|---|---|---|
| 米ぬか | 2kg | 1kg |
| 油かす | 1kg | 500g |
| 畑の土または腐葉土 | ひと握り〜500g | ひと握り |
| もみ殻(あれば) | 両手に1杯 | 片手に1杯 |
| 水 | 600〜900mL を少しずつ | 300〜450mL を少しずつ |
| できあがりで使える範囲 | 家庭菜園の畝 数本ぶんの元肥 | プランター数個〜小さな畝1本 |
水の量は「乾いた材料の重さの2〜3割」がよく言われる目安です。ただ、米ぬかは袋ごとに湿り気が違うので、表の数字はあくまで出発点です。
袋で密閉するか、切り返すか — 2つの作り方
ぼかし肥料の作り方は、大きく2つに分かれます。空気を断って寝かせる「嫌気(けんき)発酵」と、空気に触れさせながら混ぜる「好気(こうき)発酵」です。どちらが正しいということはなく、置き場所と手間のかけ方で選びます。
| 嫌気発酵(袋で密閉) | 好気発酵(切り返し) | |
|---|---|---|
| 手間 | 仕込んだら置いておくだけ | 数日おきに全体を混ぜる |
| 場所 | 袋1つ置ける日陰 | 山を作って混ぜられる広さ |
| におい | 甘酸っぱい、ぬか漬けのような | 発酵中は強め。住宅地では気をつかう |
| 温度 | あまり上がらない | 大きく上がり、湯気が出る |
| できるまで | 気温しだいで1〜2か月(一般的な目安) | 2〜4週間ほど(一般的な目安) |
| つまずきやすい所 | 水の入れすぎで腐る | 混ぜ忘れて一部が腐る・乾きすぎて止まる |
ぼかし肥料の作り方 — ポリ袋で仕込む5つの手順
用意するものは、材料のほかに大きめのたらい(またはブルーシート)、厚手のポリ袋を2枚、じょうろか霧吹きだけです。ポリ袋は破れたときのために二重にします。
手順1|乾いたまま、先によく混ぜる
米ぬか・油かす・土(腐葉土)・もみ殻を、水を入れる前にたらいの中でむらなく混ぜます。水を先に入れると、米ぬかだけがだまになって、そこから腐りやすくなります。
手順2|水は3回に分けて入れ、そのつど握る
じょうろで少しずつ水をかけ、手でもみ込むように混ぜます。予定量の半分を入れたところで、一度握って確かめます。 足りなければ残りを2回に分けて足します。ぼかし肥料づくりでいちばん大事なのが、この水分の判定です。
下の動画(音声つき・約2分)では、生の米ぬかが土の中で何を起こすのかから、水の握り判定、置き場所の温度、できあがりの見分け方、仕込む時期までを、絵で順に見ていきます。
入れすぎた水は抜けませんが、乾いた米ぬかやもみ殻を足せば戻せます。足りないより、入れすぎのほうが失敗につながります。迷ったら少なめで止めてください。
手順3|袋に詰め、空気を押し出して口を縛る
二重にしたポリ袋へ入れ、上から押して空気をできるだけ抜いてから口を縛ります。袋の中に空気が多く残ると、表面にカビが広がりやすくなります。袋ごと段ボール箱に入れておくと、破れと温度の変化の両方を防げます。
手順4|日陰の、冷えすぎない場所に置く
直射日光の当たらない場所に置きます。途中で袋を開けたり、混ぜたりはしません。 開けるたびに空気が入り、雑菌が増えるきっかけになります。
手順5|においと見た目で、できあがりを判断する
日数はあくまで目安で、できたかどうかは袋を開けたときのにおいと見た目で決めます。見分け方は、このあと図で示します。
寒い時期・寒い土地で仕込むときの注意
うちの農園がある北海道では、冬の物置は氷点下になります。微生物は寒いと働きが鈍り、発酵はほとんど止まります。 止まっただけなら暖かくなれば再開しますが、水気の多い材料が長く止まったままだと、腐る側に傾くことがあります。春に使いたいぼかしを冬に仕込むときは、温度の手当てが要ります。
温度の区切りは、発酵の進み方を読むための大まかな目安です。材料の配合や量でも変わります。
| 寒い時期にやること | ねらい |
|---|---|
| 置き場所を暮らす側へ(玄関・廊下・暖房のない部屋) | 氷点下を避けるだけで発酵が止まりにくくなる |
| 発泡スチロール箱に入れる | 夜の冷え込みをやわらげる |
| 仕込みの水をぬるま湯にする | 発酵の立ち上がりを助ける |
| 量を少なくしすぎない | 量が少ないほど冷えやすい。バケツ1杯より袋1袋のほうが温度を保ちやすい |
| 日数を長めに見る | 2か月を目安に、においで判断する |
| 暖房の真横に置く | やらない。乾きすぎと、においのこもりの原因になる |
できあがりの見分け方 — 使えるぼかし、使えないぼかし
袋を開けて判断するのは、におい・カビの色・手ざわりの3つです。とくにカビは「生えたら失敗」と思われがちですが、白いカビはむしろうまくいっている印です。
黒や青緑のカビが表面の一部だけなら、その部分を取り除いて残りを判断します。全体に広がっていれば、ぼかしとしては使わず、堆肥づくりの材料として時間をかけて分解させてください。
| 袋を開けて | 考えられる原因 | 次からの対処 |
|---|---|---|
| 腐敗臭・べたつく | 水の入れすぎ | 握り判定で「押すと崩れる」で止める。もみ殻を入れる |
| アンモニア臭 | 窒素の多い材料(油かす・魚粉)が多すぎる、水が多い | 油かすを減らし、米ぬかの割合を上げる |
| 黒・青緑のカビ | 空気が残っていた、途中で開けた | 空気をしっかり抜いて縛る。完成まで開けない |
| 変化がない・粉のまま | 水が足りない、または寒すぎる | 水を足して握り直す。暖かい場所へ移す |
| ウジがわいた | 仕込み中や開けたときにハエが卵を産んだ | 袋の口を固く縛る。表面をもみ殻や新聞紙で覆う。夏は屋内の涼しい場所で |
3月の元肥に間に合わせる — 逆算カレンダー
ぼかし肥料は、作ろうと思った日に使えるものではありません。春の植え付けに元肥として使うなら、植え付けの日から逆に数えて仕込み日を決めます。 寒い時期に仕込むほど、逆算の幅は長くなります。
図は暖かい地域の春植えの一例です。植え付け日が違えば、同じ幅でずらしてください。秋冬野菜に使うなら、夏の暑い時期に仕込むので、寝かせる期間は短くなります。
ぼかし肥料の使い方 — 元肥と追肥
ぼかしは肥料なので、量はひと握り単位で考えます。下の量は一般的な目安です。作物の種類と、畑にもともと残っている肥料分によって増減してください。
| 使い方 | 量の目安 | 入れ方 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 元肥(畑) | 1㎡あたり 100〜200g ほど | 表土10〜15cm によく混ぜる | 植え付けの2週間前 |
| 元肥(プランター) | 65cm プランター1個にひと握り〜ふた握り | 用土全体に混ぜる | 植え付けの1〜2週間前 |
| 追肥 | 1株にひと握り弱 | 株元から少し離してまき、軽く土をかける | 生育の途中、葉色が薄くなってきたら |
| やらないこと | 植え穴にかたまりで入れる/根に直接ふれさせる/表面にまいたまま土をかけない(虫とカビの原因) | ||
できたぼかしの保存
| やること | 理由 |
|---|---|
| 広げて乾かしてから袋に戻す | 発酵をそこで止め、状態を保ちやすくする |
| 袋の口を閉じ、日陰の涼しい場所に | 湿気と虫を防ぐ |
| 使い切りの目安は数か月 | 時間がたつほど効き方が変わる。次の作付けまでに使い切る量を作る |
| 次回の「タネ」として少し残す | 次に仕込むとき、土の代わりにひと握り混ぜると立ち上がりが早い |
失敗するのは、だいたいこの3パターン
| パターン | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 1. 水を入れすぎる | 袋の中で腐り、黒いカビと腐敗臭が出る | 水は3回に分け、握って「押すと崩れる」で止める |
| 2. 寒い場所に置く | 春まで発酵が進まず、使う日に間に合わない | 冬は屋内へ。日数は長めに見る |
| 3. 入れてすぐ植える | 苗の育ちが止まる、根が傷む | 元肥は植え付けの2週間前に入れる |
よくある質問
米ぬかだけでぼかし肥料は作れますか
作れます。米ぬかに畑の土をひと握り混ぜ、水分を調整して密閉すれば発酵は進みます。ただし米ぬかだけだと窒素がやや少なめなので、葉ものや生育期間の長い作物に使うなら、油かすを加えるか、追肥で補う前提で組んでください。
白いカビが生えましたが、使えますか
使えます。白い綿のようなカビは、発酵がうまく進んでいるときによく見られるもので、そのまま混ぜ込んで使って構いません。 使わないほうがよいのは、黒や青緑のカビが広い範囲に出ているとき、腐敗臭や鼻をつくアンモニア臭がするときです。
作ったぼかし肥料はどれくらい保存できますか
広げてよく乾かし、袋の口を閉じて涼しい日陰に置けば、数か月は使えるのが一般的です。ただし時間がたつほど効き方は変わるので、次の作付けで使い切れる量を作るのがいちばん確実です。湿気を吸ってカビが広がったものは使わないでください。
ぼかし肥料だけで、肥料は足りますか
作物と畑しだいです。元肥としてぼかしを入れ、足りない分を追肥で補うのが基本の考え方です。ぼかしは土をふかふかにする資材ではないので、土の水はけや団粒構造を変えたい場合は、堆肥や敷き草など別の有機物を組み合わせてください。
まとめ
| 何のために作るか | 分解の山場を土の外で越えさせ、効き方を穏やかにする |
| 材料 | 米ぬか・油かす・畑の土。家庭菜園ならポリ袋1袋ぶんで足りる |
| 作り方 | 乾いたまま混ぜる → 水は3回に分けて握って決める → 空気を抜いて密閉 → 開けずに寝かせる |
| 見分け方 | 甘酸っぱいにおい・白いカビは使える/腐敗臭・アンモニア臭・黒や青緑のカビは使わない |
| いつ仕込むか | 使う日の1〜2か月前。冬は屋内で。寒い土地は長めに |
| 使い方 | ひと握り単位。元肥は植え付けの2週間前 |
ぼかし肥料は、材料そのものより土の中の微生物に何をどう渡すかの工夫です。袋の中で起きていることは、畑の土の中で起きていることの縮図でもあります。においと手ざわりで判断できるようになると、自分の畑の土を見る目も少し変わってきます。
土そのものの微生物の量を、数字で見てみる
ぼかし肥料は、土の中の微生物に渡すエサです。では、エサを受け取る側の土には、どれくらいの微生物がいるのか。うちで使っている培養土と市販の培養土で微生物の量を測った比較と、第三者機関に出した分析の結果を、良かった数字も伸びなかった数字もそのまま公開しています。
関連記事:古い土を再生して秋にもう一度使う5つの手順|夏野菜のあとのプランター(プランターの土にぼかしを混ぜる前に)
不耕起栽培とは|耕さない畑で土が変わる仕組みと、家庭菜園での始め方(耕さない畑での肥料の置き方)

