土壌分析・土壌診断のやり方|家庭菜園での頼み先・土の採り方・結果の読み方
「葉の色が悪いから、肥料を足す」「なんとなく酸性っぽいから、石灰をまく」。家庭菜園では、土の中身を見ないまま、症状だけを見て何かを足すことがほとんどです。ところが、長く野菜を作ってきた畑を測ってみると、足りないものより、入れすぎてたまっているもののほうが多いことが少なくありません。足りないと思って足したものが、次の不調の原因になっている。これが、土を測らずに続ける土づくりのいちばんの落とし穴です。
この記事の色の使い分け ― ■ 緑=そうしたほうがよいこと・ちょうどよい状態 / ■ 橙=注意すること・入れすぎや不足 / ■ 藍=水と時間に関すること
この記事の目次
土壌分析と土壌診断は、何が違うのか
ふたつの言葉はほぼ同じ意味で使われていますが、厳密には段階が違います。土壌分析は、土に含まれる成分や性質を測って数字にすること。土壌診断は、その数字を作物ごとの基準と見比べて、何を足し、何を控えるかという処方まで出すことです。申し込むときは、数字だけが返ってくるのか、処方(施肥設計)まで付くのかを確かめてください。
| 土壌分析 | 土壌診断 | |
|---|---|---|
| やること | 土の成分・性質を測る | 測った数字を基準と比べ、対策を出す |
| 返ってくるもの | 数値の一覧(pH、EC、リン酸など) | 数値+判定+施肥の処方 |
| 自分で判断すること | 数字の読み方と、次の一手 | 処方をどこまで守るか |
| 向いている人 | ある程度読み方がわかる人/傾向だけ見たい人 | はじめて測る人 |
家庭菜園は「足りない」より「入れすぎ」が多い
畑の土壌診断の結果をまとめた報告では、長く野菜を作ってきた畑や家庭菜園で、石灰(カルシウム)やリン酸が基準を大きく超えてたまっている例が多いことがくり返し指摘されています。理由は単純で、どちらも「毎年、植える前に入れるもの」として習慣になっているうえ、雨で流れにくく、作物が吸う量より入れる量のほうが多いからです。
石灰もリン酸も、土に吸いつくと雨で流れにくい性質があります。作物が吸う量を超えた分は、毎年少しずつ土に残ります。 葉の色や育ちに出るのは、たまりすぎてほかの成分の吸収を邪魔しはじめてからです。
| 習慣になりやすいこと | たまるもの | たまると起きやすいこと |
|---|---|---|
| 植える前に毎回、苦土石灰をまく | 石灰・苦土 | pH が上がりすぎる。鉄・マンガン・ホウ素などが吸われにくくなる |
| 「実もの」だからとリン酸の多い肥料を足す | リン酸 | 効かない形で土に残る。多すぎると亜鉛や鉄などの吸収を妨げることがある |
| 元肥と追肥を「多めに」 | 窒素・カリなどの塩類 | EC が上がる。根が水を吸いにくくなり、苗が根づかない |
| 鶏ふんや化成肥料を毎年同じ量 | 石灰・リン酸・カリ | 成分どうしの釣り合いが崩れる |
| 雨の当たらない場所(ハウス・軒下・プランター) | すべての塩類 | 流れる機会がないので、たまる速さが露地より速い |
下の動画(音声つき・約2分)では、石灰やリン酸がなぜたまるのか、土の採り方と測る時期、結果を「多すぎるもの」から読む順番までを、絵で順に見ていきます。
どこに頼めばいいのか — 5つの頼み先
「土壌分析」で検索すると、ホームセンターの受付サービスや JA・分析機関の案内ページが並びます。どれも間違いではありませんが、知りたいことによって向いている頼み先が違います。家庭菜園の人が選びやすい順に並べると、次のとおりです。
| 頼み先 | 主にわかること | 向いている人 | 確かめておくこと |
|---|---|---|---|
| ホームセンターの受付サービス | pH・EC・リン酸・石灰・苦土・カリなどの基本項目。施肥の提案が付くメニューもある | はじめて測る家庭菜園の人 | メニューごとの項目数、処方が付くか |
| 地域の JA | 基本項目+地域の基準に沿った判定と施肥設計 | 地元の基準で見たい人/畑の規模がある人 | 組合員でなくても受けられるか、受付の窓口 |
| 民間の分析機関 | 項目を選べる。微量要素、微生物の量など詳しい項目も | 原因を深く調べたい人 | 申込書の書き方、採る量、送り方 |
| 自治体の相談窓口 (農業改良普及センター等) | 分析の受け先の紹介、結果の読み方の相談 | どこに頼むか決められない人 | 家庭菜園の相談も受けているか |
| 自分で測る (pH 計・EC 計・簡易キット) | pH・EC、キットによっては硝酸態窒素・リン酸・カリの目安 | 毎年の変化を自分で追いたい人 | 精度は傾向を見る程度。CEC などは測れない |
送る土の量・袋・申込書の書き方は頼み先ごとに指定があります。採る前に指定を読んでおくと、採り直しになりません。
何がわかるのか — 結果表に並ぶ項目の意味
返ってくる結果表には、見慣れない項目が並びます。全部を理解する必要はありません。家庭菜園でまず見るのは pH・EC・リン酸の3つ、次に石灰・苦土・カリの釣り合い、余裕があれば CEC と腐植、という順で十分です。
| 項目 | 何を表すか | ひとことで言うと | 見る順 |
|---|---|---|---|
| pH(ピーエイチ) | 土の酸性・アルカリ性の度合い | 養分の「吸いやすさ」を決める土台 | 最初 |
| EC(電気伝導度) | 水に溶けている塩類(肥料分)の濃さ | いま効く肥料が、どれだけ残っているか | 最初 |
| 可給態リン酸 | 作物が使える形のリン酸の量 | 家庭菜園でいちばんたまりやすいもの | 最初 |
| 交換性の石灰・苦土・カリ | 土に吸いついて蓄えられている量 | 3つの釣り合いが大事 | 2番目 |
| CEC(塩基交換容量) | 養分を抱えておける器の大きさ | 土の「胃袋の大きさ」 | 3番目 |
| 腐植 | 分解が進んだ有機物の量 | 土の「糊」と「器」のもと | 3番目 |
| 微生物の量 | 土の中の菌の量や、その働きの目安 | 一部の機関が扱う新しい見方 | 必要なら |
目安は作物で違います。ジャガイモやブルーベリーは低め、ホウレンソウやエンドウは高めを好みます。ここに示したのは一般的な目安です。作物・土の種類・地域で基準は変わるので、お住まいの都道府県の土壌診断基準も確認してください。
EC は「効く肥料がいまどれだけ残っているか」を見る数字です。同じ土でも、測り方(土と水の割合)が違えば数字が変わるので、ほかの結果と比べるときは同じ測り方どうしで比べてください。高い場合の目安も、作物と測り方で変わります。
石灰・苦土・カリは、それぞれの量だけでなく3つの釣り合いが大事です。たとえばカリが多すぎると、苦土が十分にあっても作物に吸われにくくなります(拮抗作用と呼ばれます)。結果表に「塩基バランス」や比率が出ていたら、どれか1つが突出していないかを見てください。
土の採り方 — 結果の半分は、ここで決まる
分析の精度がどれだけ高くても、送った土が畑を代表していなければ意味がありません。畑の土は、場所によって驚くほど違います。肥料を置いた株元、通路、水のたまる隅。1か所だけ掘って送ると、その1か所の結果しか返ってきません。
ジグザグにたどるのは、畝の片側や一列だけに偏らないためです。深さは「ふだん耕したり、根が主に張ったりする範囲」。表面だけをすくうと、置いた肥料の影響で数字が高く出ます。
手順1|採る日を選ぶ
収穫が終わり、次の肥料や石灰を入れる前に採ります。入れた直後は、その資材の分だけ数字がはね上がります。大雨の直後も避けます。肥料分が一時的に下へ流れ、EC などが低く出ることがあります。
手順2|数か所から同じ量ずつ採る
上の図のように、畑をジグザグにたどって5か所前後から、移植ごてやスコップで作土の上から下まで、同じ厚みで切り取ります。1か所だけ多く採ると、その場所の結果に引っぱられます。
手順3|バケツでよく混ぜて、1つにする
採った土をきれいなバケツに集め、石・根・ごみを取り除きながら、全体が均一になるまでよく混ぜます。ここで混ぜた1つが、畑の「平均の土」になります。
手順4|日の当たらない場所で乾かす
新聞紙などに薄く広げ、直射日光や暖房に当てず、風通しのよい日陰で乾かします。熱をかけると成分が変わるおそれがあります。頼み先が「生のまま」と指定している場合は、その指定に従ってください。
手順5|指定の量を袋に入れ、記録を添える
頼み先が指定する量を袋に入れ、採った日・場所・前作・次に植えたい作物を書き添えます。次に植える作物がわかると、処方がその作物に合わせたものになります。
| やりがちな採り方 | 何が起きるか | こうする |
|---|---|---|
| 1か所だけ掘る | その場所の偏りがそのまま結果になる | 5か所前後を混ぜる |
| 株元の真下を採る | 追肥の残りで数字が高く出る | 株と株の間、根の広がる範囲から |
| 表面だけすくう | 置いた肥料・石灰の影響が強く出る | 作土の上から下まで同じ厚みで |
| 石灰をまいてから採る | pH・石灰が実態より高く出る | 資材を入れる前に採る |
| 日なたやストーブで乾かす | 成分が変わるおそれがある | 風通しのよい日陰で |
| 畑とプランターの土を混ぜる | どちらの結果でもなくなる | 区画ごとに別の袋で |
いつ測るか — いちばんよいのは「収穫後の秋」
春に植える直前に測ろうとすると、結果が届くころには植え付けが迫っていて、石灰を控える・堆肥を入れて寝かせるといった手が打てません。夏野菜が終わった秋に採れば、冬のあいだに結果を読み、春の土づくりに反映できます。
結果が届くまでの日数は頼み先で違うため、図の位置はおおよその流れです。毎年同じ時期に測ると、前の年との比較がそのまま土づくりの成績表になります。
結果の読み方と、次の一手
結果表を受け取ったら、「足りないもの」を探す前に、「多すぎるもの」から見ます。多すぎるものを止めるのは、お金もかからず、今年からできる対策だからです。
| 結果 | 土の中で起きていること | 次の一手 | やらないこと |
|---|---|---|---|
| pH が高い | 石灰がたまり、微量要素が吸われにくい | 石灰を止める。有機物を入れて様子を見る | 「念のため」の苦土石灰 |
| pH が低い | 酸性が強く、根が傷みやすい | 処方の量だけ石灰で調整。植える2週間ほど前までに | 目分量でまとめて大量に入れる |
| EC が高い | 肥料分が濃く、根が水を吸いにくい | 元肥を減らす・止める。露地は雨に当てる | 元気がないからと追肥する |
| EC が低い | いま効く肥料分が少ない | 作付け前なら普通。処方どおり元肥を入れる | 一度に多く入れて取り返そうとする |
| リン酸が多い | 効かない形で土に残っている | リン酸の多い肥料・鶏ふんを控える | 「実もの用」の肥料を習慣で足す |
| 石灰・苦土・カリの釣り合いが悪い | 多い成分が、ほかの成分の吸収を邪魔している | 多いものを止め、少ないものだけ補う | 全部入りの肥料で一律に足す |
| CEC・腐植が少ない | 養分を抱えておけない土 | 堆肥などで有機物を年単位で入れる。肥料は分けて少しずつ | 一度に効かせようとする |
測ったのに役に立たない、3つのパターン
| パターン | 何が起きたか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 1. 測っただけで終わる | 結果表を見て安心し、入れる資材はいつもどおり | 「止めるもの」を1つ決めて、実際に止める |
| 2. 毎回ちがう頼み先・ちがう時期 | 測り方が違い、去年と比べられない | 同じ頼み先・同じ時期・同じ採り方でそろえる |
| 3. 足りないものだけ見る | 不足分を足し、多すぎるものはそのまま。さらに偏る | 「多すぎる」から先に読む |
よくある質問
家庭菜園の小さな畑でも、土壌分析をする意味はありますか
あります。むしろ小さな畑ほど、石灰や肥料を「目分量で多めに」入れがちで、たまりやすい傾向があります。1回測れば、入れなくてよい資材がわかり、その分の費用と手間が減ります。 区画が分かれているなら、区画ごとに測るとさらに役立ちます。
市販の pH 計や簡易キットだけでは足りませんか
毎年の変化を追うには役立ちます。ただし精度は傾向を見る程度で、CEC や石灰・苦土・カリの釣り合いなどはわかりません。最初の1回は分析を頼んで全体像をつかみ、その後の年は自分で pH と EC を追う、という組み合わせが現実的です。
プランターの土も分析に出せますか
頼み先によっては受け付けています。ただしプランターは土の量が少ないので、分析に出すより、古い土を再生して足りない分を補うほうが手軽なことが多いです。雨に当たらないぶん肥料分がたまりやすいので、EC だけでも自分で測っておくと失敗が減ります。古い土の再生は古い土を再生して秋にもう一度使う5つの手順にまとめています。
分析の結果どおりにすれば、連作障害や病気は防げますか
防げるとは書けません。土壌分析でわかるのは主に養分と性質で、病原菌や線虫の有無は通常の項目には入っていません。養分の偏りを直すと育ちが安定することはありますが、連作障害への対策は輪作が基本です。何年あけるかと区画の回し方は連作障害とはにまとめています。
まとめ
| なぜ測るか | 家庭菜園は「入れすぎ」が多い。足す前に、止めるものを見つける |
| どこに頼むか | はじめてなら処方まで付くもの(ホームセンターの受付・JA など)。料金と日数は申込先で確認 |
| まず見る項目 | pH・EC・リン酸。次に石灰・苦土・カリの釣り合い |
| 採り方 | 資材を入れる前に、5か所前後から作土を同じ厚みで採って混ぜ、日陰で乾かす |
| いつ測るか | 収穫後の秋。以後は2〜3年に一度、同じ時期に |
| 読み方 | 「多すぎる」から読む。止める → 最後に足す |
土づくりは、何を入れるかより先に、何がすでに入っているかを知るところから始まります。数字は答えそのものではありませんが、「今年は何をやめるか」を決めるための、いちばん確かな手がかりです。
測った数字を、そのまま公開しています
このサイトでは、使っている培養土と、その土で育てた野菜を第三者機関に出して測った結果を、よかった数字も伸びなかった数字もそのまま載せています。土の中の微生物の量を比べた分析もあります。数字の読み方の練習にも使ってください。
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